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ゼロからはじめる磁気応用技術(その3)

アナログセンサーでの応答周波数と応答速度との関係性

アナログセンサーの性能に関わる
有効長の長短で変わる最大応答速度

マコメ研究所製の磁気センサー製品カタログには、「応答周波数(周波数特性)」と書かれた項目があります。「直線変位センサー」や「回転角検出センサー」などの製品カタログにも、同項目があり良く分からない方も多いと思います。一般的には、「直線変位なら応答速度」「回転角なら応答回転数(回転速度)」になるところですが、マコメ研究所では「周波数」という表現を使用しています。それでは、電気の世界ではよく使う周波数ですが、これを「変位」に言い換えるとどうなるか考えてみたいと思います。
例えば、変位センサーで有効長100mmのマコメ研究所製「スリーブセンサー」が、カタログ値の応答周波数300Hz(ヘルツ)で変位しているとします(写真)。300Hzとは「1秒間に300往復していること」を意味し、スリーブセンサーは、回転運動を直線運動に変位(変換)する機構を持ちます(図1)


写真 マコメ研究所製のスリーブセンサー「ET-851」シリーズ


図1 回転体とそれに伴う平行運動機構

半径50mmの回転体が1回転すると、往復全行程200mm平行移動します。回転体が一定回転でも、平行移動の速度は正弦波状に刻々と変化し、回転体A、C点で最速となりB、D点では瞬間に速度0となります。よって、直径100mmの回転体が300回転/秒で作動していることになります。
このときスリーブの変位速度は一定速度ではなく、A、C点通過の軌跡点a、c点では

円周=100mm×3.14=314mm・314mm×300=94.2m/sec

が瞬間最大速度となります。

ただし、これが実際の「最大応答速度」とはならないので注意が必要です。
製品カタログの応答周波数が同一で、有効長が変わりますと、図1のように回転体の径が変わるので、当然ですが瞬間最大速度も変わります。「円周が大きい(有効長が長い)ほど高速応答である」といえます。
それでは、「有効長が長いほど性能が良いのか」と言えば、そうではなく反対に分解能が荒くなることを意味します。つまり、有効長LのAセンサーと倍のBセンサーでは出力電圧が有効長に関係なく一定値のため、単位長の変化する電圧値が有効長で異なっているからです(図2)。したがって、「有効長が長いほど最大応答速度は上がる」と分解能が低くなり、「有効長が短いほど最大応答速度が下がる」と分解能が高くなる傾向があります。

図2 有効長と出力との関係
図2 有効長と出力との関係

ところが有効長が異なるAセンサーとBセンサーで同じ変位量を正弦波状に往復運動させた場合、どちらも最大応答速度は、等速になってしまいます。なぜなら応答速度を決定するのは、内部電気回路のフィルター定数に依存するためで変位センサーの有効長とは直接関係ないからです。つまり応答性は、機械的な変位量を電気量に変換された後の周波数成分に依存しているということです。
マコメ研究所製の変位センサーが応答周波数で記載しているのは、この理由でありますが、同じ周波数なら有効長が長いほど、単位時間当たり移動できる距離が長い分、最大応答速度は増加します。例えば、図3のように得られる周波数が同じであれば、Lが有効長(または有効角内)であれば、長いもの(大きな角度)ほど応答速度が上がり、微小部分を振動している場合などは非常に応答速度が低くなります。

図3 周波数一定の変位量の増減
図3 周波数一定の変位量の増減

応答周波数は実用値にあらず、
あくまで規格値に過ぎない

それでは、実際の応答速度を出すにはどうすればよいのでしょうか。そこで応答周波数について簡単に説明します。
アナログの場合、無限小まで信号領域があると考えられます。その際、どこまでを取り扱う範囲かあらかじめ決めておかないと、「無限の応答性がある」となってしまいます。そこで一般的にアナログセンサーでは、直流時を100%として、約70%まで(厳密には、1/√2)落ちた周波数の値を、応答周波数や周波数特性と言います。
そこで、応答周波数の脇によく書かれている「-3dB(デシベル)」とは、上記と同じ意味を対数表記したもので、アナログ領域が無限小まで広がるため普通のリニアスケールでは書き表し難いことから対数として一般的に表します。よって、リニアでは、「1,2,3」が対数では「1,10,100」と言うような単位としたスケール上に特性を書きます。
「なぜ、直流時の70%しか出てないのに応答していると言えるの?」と思われるかもしれません。実際に電圧量だけでなく、位相も遅れてリアルタイムな変位に対して過去の電圧量を出力しています。よって、使用用途にもよりますが、応答周波数とは実用値ではなく、あくまでも規格値に過ぎないと考えるべきです。例えば、有効長100mmを等速で変位しているセンサーがあるとします(図4)

図4 等速往復変位の状態図
図4 等速往復変位の状態図

応答周波数300Hz(-3dB)とすると、図の三角波の周波数成分は奇数の高調波※からなり、約10倍程度の成分まで含ませるとしたら、基本波は30Hz程度の正弦波となります。ほぼ忠実に変位に追従するためには、一周期約33msec内に一往復終えることになります。
そこで、このセンサーの最大応答速度は、

最大応答速度≒200mm/0.033sec=200mm×30(Hz)=6m/sec

となります。立ち上がりの速い変位の場合や複雑な変位を伴う場合は、さらに高調波成分が必要で50倍程度含ませると、基本波は6Hz程度に落ちます。そのため、最大応答速度は1.2m/sec程度に落とさないと、応答しないことになります。変位がどのような周波数成分を持つかは大変難しいことですが、一般的に正弦波に近ければ高調波成分も少なく、矩形波などはかなりの高調波を含まないと三角波に近くなってしまいます。明快な値は出ませんが実際の応答速度は、応答周波数の1/10以下で最大応答速度を計算することが妥当と思われます。

※ 基本波+基本波の整数倍=高調波の合成で色々な波形(変位軌跡)ができている

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